よくあるご質問

Q.不当解雇を規制する法律は?

A.不当解雇について,労働法は,どのような定めをしているのでしょうか。
この点,労働法という名前の法律は存在せず,労働基準法や労働契約法,労働組合法などの労働関連法規を総称して「労働法」と呼んでいます。

労働法の中で最も有名な法律は,労働基準法ですが,労働基準法は労災による負傷中の解雇制限や解雇予告・解雇予告手当について定めているだけで,会社等の使用者から従業員の解雇を一般的に制限する規定はおいていません。

使用者が従業員を解雇することを一般的に制限している法律は,労働契約法です。
労働契約法16条は,「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする」と定めています。
しかし,この規定だけでは,どのような場合に解雇が無効になるのか不明です。
この規定は結局,これまでの裁判例の積み重ねによって,法は労働者保護を要請しており使用者から簡単には解雇はできないという判例法理を明文化したものであり,具体的な判断基準としてはほとんど意味がないのです。

なお,退職勧奨の形を取る実質解雇についても当然のことながら上記判例法理が当てはまりますので,不当な退職勧奨に根負けして退職届を書いてしまったという場合にも,諦めずに弁護士法人エースにご相談ください。

Q.どんな場合に解雇は無効になる?

A.それでは,解雇が無効になるのか有効になるのかはどのような基準で見ていけばいいのでしょうか。
この点,これまでの裁判例をみると,解雇が有効となる要件はかなり厳格であるといってよく,会社側経営者としては,解雇を有効とするだけの理由があるかを相当慎重に検討しなければなりません。

いずれにしても,解雇は原則として無効と考えてしまっても誤りではないのです。
ですので,どんな理由があれば解雇が無効になるかを考えるよりも,どんな理由であれば解雇が有効になるのかを見ていく方が基準はわかりやすいと言えます。

ただ,具体的にこういう基準ということを示すのはかなり難しく,やはり類似の裁判例を通じて,その解雇が有効なのか無効なのかを見ていくことになるでしょう。

Q.解雇された場合の相談窓口は?

A.解雇されてしまった場合に,その有効性を判断したいというときには,会社に解雇理由を書面で交付するよう求めた上で,労働法や,労働裁判(訴訟),労働審判などの実務に精通した弁護士に相談されることをお勧めします。

もちろん,労務トラブルの相談先として,労働組合や労働基準監督署の相談窓口などもあり,労働基準監督署からの是正勧告や指導なども一定の効果は期待できるものの,具体的に解雇の有効性を争いたいとか,使用者から不当解雇による慰謝料を取りたいとか,和解金や賠償金の額がどの程度になるか知りたいという場合には,やはり労働法務に精通した法律事務所や弁護士法人等の専門家を相談先とする方がより直接的な解決に通じると思われます。

何れにしても,相談される場合には,できる限りの資料を用意しておく方が効果的です。
就業規則,労働契約書,解雇理由証明書などのほか,メールやその他の文書など関連すると思われる資料はできる限りお手元に用意されることをお勧めいたします。

なお,これらの相談窓口に相談する場合に,残業代や深夜割増賃金などの支払いも共に相談されることも良くあります。
弁護士法人エースの残業代相談サイトもご覧ください。

Q.解雇が無効になるとどうなる?

A.解雇が無効になった場合,もちろん法的な第一次的効果は,労働契約の継続ですが,労働者として労働契約の継続を望まないことも多いため,最大の関心事は受領できる金額であることほとんどです。
不当解雇として会社側等の使用者から従業員等の労働者の精神的苦痛に対する慰謝料の支払いが認められる場合があるほか,バックペイという強烈な効果をもたらします。
会社とのトラブルが労働審判や労働裁判(訴訟)となってしまった後ですから,会社との関係や他の社員との関係上,従業員側として,解雇が無効だとしても雇用関係継続を望まない場合が多いため,解雇が無効となった場合の最大の効果はバックペイが認められることといっても過言ではないかもしれません。

労働審判や裁判(訴訟)となった場合でも,審判や判決までいくことはまれで,通常は和解で終決します。
和解の場面では,判決や審判までいけば認められるであろう慰謝料額やバックペイの額などを考慮し,和解金や解決金といった名目で金銭授受が行われる場合もあります。
また,特に懲戒解雇とされていた場合には,退職金の支払いもされていないことが多いので,和解の中で退職金の支払いが認められることもあります。

もちろん,従業員本人が雇用関係の継続を望めば,労働契約は有効なまま残っていますので法的には働き続けることができますが,実際には,和解の中で労働契約を終了させる合意がされる場合が多いといえます。

Q.解雇無効の強烈な効果、バックペイとは?

A.経営者などの使用者側にとって,解雇無効の最も強烈な効果は,バックペイです。
労働者側にとっても,相当額の金銭を受け取れるということでバックペイは重要な意味を持ちます。

バックペイとは,解雇後に会社が従業員に対して支払わなかった給与の全部または一部を支払わせることをいいます。
解雇の有効性が争われると,その決着が着くまでに早くても2〜3ヶ月かかりますし,1年以上の期間がかかることもよくあります。
解雇が無効になると,この期間についても労働契約が有効であり,かつ労働者が働けなかったのは会社側の責任となるので,労働者は会社等の使用者に対して賃金支払請求権を有するのです。
たとえ2〜3ヶ月でも一定程度の金額となりますし,1〜2年争われたようなケースではこの額がかなり多額になりますから,会社側経営者にとっても労働者側従業員にとっても重要な関心事になるのです。

Q.不当解雇を争っている期間の生活費?

A.解雇されたということになると,その解雇が有効であろうと無効であろうと,事実上,その状態で働き続けることは不可能です。
そのため,不当解雇だと思って解雇の有効性を争おうとしても,その係争中の期間は収入が途絶えてしまうことになりかねません。
しかし,実際には,解雇の有効性を争いながらも別途働き口を探すとか失業保険を仮給付してもらうという形で収入を得ることはできます。

なお,解雇の有効無効の係争中に労働者が別の働き口で収入を得た場合,解雇が無効になった際のバックペイの金額から当該収入を控除することができるかという点については,一部は控除できるとされています。
具体的には,バックペイの金額の6割を超える部分のみ控除可能とされています。
(バックペイは少なくとも元々の給与の6割は認められるということです。)

Q.試用期間満了時に本採用を拒否された場合も金銭補償を受けられますか?

A.はい,試用期間といえども,使用者側が自由に労働者を解雇したり自由に本採用を拒否したりできるわけではありません。
試用期間満了前の解雇も,試用期間満了時の本採用拒否も通常の解雇よりは広く認められる余地はありますが(留保解約権付の労働契約),会社等の使用者側からの一方的な労働契約終了という意味では通常の解雇と同様ですから,やはり通常の解雇と同じように解雇権濫用法理(労働契約法16条)に服すると考えられています。

要するに,試用期間を設定しても,設定しないよりは解雇が認められやすくなっているといえるけれども,やはり解雇したり本採用を拒否したりすることは簡単にはできず,客観的に合理的理由があり,社会通念上相当といえなければ無効とされることになります。  そして,試用期間中の解雇や本採用拒否が無効の場合には,損害賠償請求であったり係争中の賃金支払(バックペイ)請求をすることができますので,一定の金銭補償が受けられるということになります。

Q.内定取消の場合にも金銭補償を受けられますか?

A.はい,内定は,一定の時期を就労開始時とする使用者と労働者の正式な労働契約(就労始期付解約権留保付労働契約)ですから,これを使用者側から一方的に破棄することは原則としてできません。
具体的には,労働契約が成立している以上は,通常の解雇や試用期間中の解雇などと同様に,解雇権濫用法理に服すると考えられています。
つまり,内定取消に客観的に合理的理由があり,社会通念上相当といえなければ無効とされることになります(労働契約法16条)。

そして,内定取消が無効である場合には,その取消行為が無効であるとして慰謝料や就労開始日以降の賃金を請求できます。内定取消が争われたケースで,未払給与合計108万円余と慰謝料100万円を認めた裁判例があります(東京地裁平成16年6月23日 オプトエレクトロニクス事件)。

Q.内々定を取り消された場合に金銭補償を受けられますか?

A.内々定を取り消された場合でも,一定程度の金銭補償を受けられる可能性があります。
内々定の場合は,内定と異なり条件付労働契約が成立しているとまではいえないと考えられるため,損害賠償の要件は内定取消より厳しくなると見るべきですが,採用内定通知書交付の直前にされた内々定取消について,労働契約を締結する過程における信義則に反し不法行為を構成するとして慰謝料55万円の支払いを認めた裁判例があります(福岡高裁平成23年3月10日 コーセーアールイー事件)。

したがって,内々定を内定通知交付直前に取り消されたような場合には,慰謝料という形で金銭補償を受けられる可能性はあります。

Q.雇い止めの場合にも金銭補償を受けられますか?

A.はい,期間の定めのある労働契約の場合に期間満了時に更新を拒否される雇い止めのケースでも金銭補償を受けられる場合があります。
ここでも,雇い止めに正当な理由があるかがポイントとなり,労働者において期間満了時に更新されると期待することに合理的理由がある場合には,解雇権濫用法理と同様に,その雇い止めについて客観的に合理的理由があり社会通念上相当といえなければその雇い止めは無効とされます(労働契約法19条 雇い止め法理)。

したがって,更新を期待することに合理的理由がある場合には,その雇い止めが無効であるとして雇い止め後の賃金(バックペイ)請求や,損害賠償請求が認められる可能性があります。

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